目次
1 年金分割とは
平成16年6月に、法律が改正され離婚時年金分割制度が創設されました。
年金分割とは、簡単にいうと、婚姻期間中に夫婦がそれぞれ決まった金額で納めていた年金保険料を、離婚の際に、それぞれが同じ金額の年金保険料を納めていたように変更する制度です。
2 年金分割の対象となる年金とは
年金分割の対象となる年金について考える前に、まずは年金制度について説明します。年金について、種類に分けて説明しますが、内容に応じて、1階から3階というように階数に例えて説明していきます。
① 自営業者の方
自営業者の方は、国民年金への加入義務があります。国民年金というのは、最低限の年金制度であり、年金保険料が少額の代わりに将来貰える年金も低額になっています。自営業者は、厚生年金には加入できませんが、将来もっと年金を貰いたい方は、より多くの年金保険料を支払う必要がありますが、国民年金基金やイデコに加入することができます。国民年金とは異なり、国民年金基金やイデコに加入するかどうかは強制ではなく、自由です。
② 会社員・公務員の方
分かりやすく単純にして説明すると会社員や公務員の方は、国民年金と厚生年金への加入義務があります。自営業者とは異なり国民年金だけではなく、厚生年金への加入義務もあるのです。国民年金だけの自営業者と比べると厚生年金にも加入している会社員や公務員は、年金保険料を多く支払う必要がありますが、その分、将来に貰える年金額も多くなります。会社員や公務員の方が、将来もっと年金を貰いたいと思えば、より多くの年金保険料を支払う必要がありますが、確定拠出年金や企業年金に加入することができます。
③ 扶養(3号)の方
3号被保険者と呼ばれる方で、よく「扶養の範囲内」と呼ぶ方のことです。具体的には、会社員や公務員に養われている20歳以上60歳未満の方で130万円未満の収入の方です。自営業者に養われている場合は3号被保険者ではないことに注意が必要です。扶養の範囲内である3号被保険者は、年金保険料の自己負担はありません。専業主婦(夫)や主婦(夫)業をしながらパートをしている方が当てはまります。
3 年金分割を請求した方が得をするのか
年金分割を請求した方がいいかは、夫又は妻が、自営業者なのか会社員・公務員なのか、3号被保険者なのかによって変わってきます。
その理由は、年金分割の対象となる年金は、2階部分と3階部分の年金だけだからです。1階部分は対象になりません。
つまり、例えば、妻が夫に対して年金分割を請求するかどうか悩んでいる場合、夫が自営業者であり、国民年金基金やイデコに加入していなければ、年金分割を請求することはできません。1階部分の国民年金は年金分割の対象外だからです。
他方で、夫が会社員や公務員である場合、強制的に更生年金に加入していますので、2階部分である厚生年金について年金分割を請求すると得になります。但し、厚生年金の年金保険料は収入によって金額が変わり、高収入であれば年金保険料が高くなりますが、夫より妻の方が高年収の場合には、妻がこれまで支払ってきた年金保険料を夫に分割することになりますので、そのような意味においては損することになります。
妻が夫より収入が少ない会社員・公務員の場合や自営業者、3号被保険者である場合は得をすることになります。
4 年金分割をするにはどのようにすればいいのか
年金分割をしたい場合、まず年金事務所で、「年金分割のための情報通知書」という書類を貰う必要があります。年金番号が分かる書類と戸籍をもって年金事務所に行っていただくことになり、約1か月程度でご自宅に郵送で届くことになります。
5 年金分割を求めるための手続
「年金分割のための情報通知書」を入手した後の手続きをご説明します。
実は、年金分割は、簡単にはできず、複雑な手続が必要になります。
夫婦の2人が年金分割をすることに合意しただけでは、年金分割はできないのです。
2人とも納得しているから。と「年金分割のための情報通知書」を年金事務所持って行ったとしても、書類の不備で受付をしてもらえません。
では、どのような手続きが必要なのでしょうか。
①公正証書を作成するパターンと、②家庭裁判所で調停をするパターンがあります。
どちらかのパターンで書類を作成し、年金事務所に持って行くと、年金分割ができます。
これらの①と②を併せて合意分割といいます。
① 証書を作成するパターン
公正証書という言葉を聞かれたことはあるでしょうか?遺言を書くときにも登場する言葉です。公証役場という公的な機関で、作成してもらった書類のことをいいます。
公証役場は日本全国にあります。
夫婦2人で公証役場に行き、数万円の手数料を支払うと公正証書という書類を作成してもらうことができます。
公証役場や公正証書については、「日本公証連合会のホームページ」をご覧ください。
公証役場一覧 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)
② 家庭裁判所で調停をするパターン
調停というのは家庭裁判所での話し合いの手続のことをいいます。数千円程度の手数料で利用できます。
離婚で揉めた夫婦が利用することが多いですが、最終的に夫婦2人が納得して離婚条件を決めると離婚条件をまとめた書類を裁判所が作ってくれます。
この書類に、年金分割についての約束を記載してもらうことによって、年金分割をすることができます。
6 3号被保険者の特例
ご説明しましたとおり公正証書や家庭裁判所での調停が必要になりますが、面倒だと感じられる方も多いと思います。
実は、公正証書の作成や家庭裁判所での調停をしなくても、年金分割請求をする方法が1つあるのです。
それは、3号分割という制度です。3号分割の制度は、3号被保険者が年金事務所に行き手続をするだけで年金分割ができてしまうのです。
しかし、この制度を利用できるのでは、3号被保険者の方のみ限られています。
また、平成20年4月1日以降に年金保険料を支払った場合のみが対象になります。
したがって、自営業者や会社員・公務員の方はこの制度を利用することはできませんし、専業主婦(夫)など3号被保険者であっても平成20年3月31日以前の年金保険料について利用することができません。公正証書や調停の手続をせざるを得ないです。
7 さいごに
年金は将来に受け取れるお金ですぐに貰えるわけでもありませんし、年金分割の手続も複雑ですので、年金分割がうやむやになることがあります。
しかし、将来の生活保障として現在においても年金は重要です。
また、婚姻期間が長い熟年離婚の場合には年金分割をするかしないかで、将来の年金額も大きく変わってきます。
離婚する際には、今のことだけではなく、老後のこともしっかり考えていきましょう。
滋賀バディ法律事務所は離婚問題に豊富な実績と知識があります。
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1人で悩まず、一緒に考えていきましょう。
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